人ー人間ー人

 『対話集』の「はじめに」で次のように書いている。

この対話では「人間」を定義し、それを用いている。2016年以降、その「人間」の意味が実は「人」にあったことを確認し、「人―人間―人」の第三の「人」を用いている。対話集では元のままにしてある。

  これは対話集が終わった後の2017年に追記したものである。

 江戸時代まで「ひと、人」を用いてきました。「人間」とかいて「じんかん」と読む言葉はあったのですが、そしてそれはいまも使うのですが、その意味は「人の住む世界。現世。世間。」のことです。この出典は、1988年の国語大辞典(小学館)である。

 近代になって、西洋語の human の翻訳語としてもちいるために「人間」の意味を拡げ「にんげん」と読むようにしたのです。同じ国語辞典には「人間(にんげん)」について次のように書いている。

1 人の住む世界。世の中。世間。人間界。じんかん。人の住む世界。世の中。世間。人間界。じんかん。
2 人界に住むもの。ひと。人類。
3 人倫の道を堅持する生真面目な人。堅物。
4 人としての品位。人柄。「あの人は人間ができている」

 近代語としての「人間」の形成とその意味、そして定義集からの再定義については『対話集』の「人間の溶解」で語りあった。

 その後、震災と東電核惨事を経て、自著『神道新論』をまとめてゆく過程で、実はこの「ひと」こそ、近代が発見した「人間」を今日において越えてゆく意味を内包していることに、思い至った。